コミュニティ強化と家族トレーニング(CRAFT)の性依存への応用
「依存って治るの?」
「家族としてどう接すればいいの?」
「誰かに話すのは嫌だ、専門家に相談するのも恥ずかしい。でも板挟みになっていて、どうしたら?」
「本人は平気な顔をしているのに。私ばかりしんどい!」
「治療ってどれくらいかかるの?」
これらの質問や想いは、依存症にかかっている当人よりも、ご家族からよく聞かれます。
【「CRAFT(コミュニティ強化と家族トレーニング)」とは?】
CRAFTは、物質依存症の治療で効果を示してきたアプローチですが、その原理は性依存症や買い物依存など、いわゆるプロセス(行動)依存にも応用することができます(プロセス依存とは、薬物などではなく、行動によって快楽を得ようとする依存症のことを指します)。性依存症回復に向けて、依存症を抱える本人と家族が共に協力し、より健全な生活へと導くことを目指すプログラムです。
※ギャンブル依存や大人のゲーム依存は除外されます。
今回は性依存に特化したものを書いてみます。
性依存の現れ方としては、出会い系アプリの多用、性風俗に頻繁に通う、自慰行為や長時間のポルノ閲覧、グループsex、性犯罪的な内容への執着(盗撮、痴漢、露出、未成年との行為等)などがよくあります。
性依存については、男性と女性で多くの違いもありますが、基本的なところを理解しておくことが大事です。
【CRAFTの主な特徴とアプローチ】
- 性依存行動の強化よりも、代替行動の強化に焦点を当てる:
- 性依存行動やそれに付随する行動によって得ていた報酬を、他の健全な活動で得られるように支援します。例えば、趣味活動、運動、友人との交流などを積極的に勧めます。
- 家族の役割:
- 性依存の行動や所持金などを直接的に管理・監視・コントロールしようとせず、本人が自発的に変化を促すような環境作りを支援します。
- 家族間のコミュニケーション改善を図り、互いの理解を深めます。
- 治療者との連携:
- ご家族に対して、性依存に関する知識や対応方法を指導することもあります。
- 本人に対しては、認知行動療法などの他の治療法と併用することも考えられます。必要に応じて、処方など医療機関との連携も重要になります。
【CRAFTの具体的なステップ】
- 性依存行動の特定:
- 本人や家族と協力して、具体的な性依存行動は何なのかを見つけます。
- 代わりとなる行動の探索:
- 性的な行動の代わりに、本人が興味を持ち、楽しめる代替行動を一緒に探します。
- 強化スケジュール:
- 代替行動の実行に対して、具体的な報酬を与えるスケジュールを立てます。報酬と言ってもお金などではなく、「ありがとう」や「〜してくれて助かった」といった褒め言葉や、楽しい活動を一緒にすることなど、社会的報酬です。
- 家族への教育:
- 家族に対して、性依存について正しい知識をお伝えし、共依存的な行動を避けるための指導を行います。特に、「性犯罪されるくらいならお小遣いをたくさんあげよう」等、つい甘やかしたり、良かれと思ってやった行動が本人の問題を助長させてしまうイネーブリングについて説明します。また、家族のセルフケアについても話し合います。
- コミュニケーションスキル向上:
- 家族間のコミュニケーションスキル向上のためのトレーニングを行います。例えは、「なんで〜なの」「どうして〜してくれないの」「私がせっかく〜」等のセリフはNGです。
【CRAFTの注意点】
- 個人の状況に合わせた柔軟な対応:
- 性依存の程度や家族の状況は一人ひとり異なるため、標準的なプログラムをそのまま適用するのではなく、個々のケースに合わせて柔軟に対応することが重要です。
- 専門家のサポート:
- 性依存は複雑な問題であるため、専門家のサポートを受けることが望ましいです。
- 長期的な取り組み:
- 行動の変化には時間がかかるため、家族を含め、長期的な視点で取り組むことが大切です。年単位で考えるくらいが焦らず済んで丁度良いと思われます。
- 違法行動がある場合の対応:
- 違法な性行動や、窃盗行動、建造物侵入行為などもある場合は、家族も社会的に追い込まれ多大な困難に見舞われます。本人を受診させようとしても、依存対応している一般的なクリニックやカウンセリングでも診てもらえない場合があります。カモシカ心理コンサルティングは性犯罪にも対応しています。
【CRAFTのメリット】
- 家族の関与による治療効果の向上:
- 家族の協力により、治療の継続性が向上し、より良い結果が期待できます。
- 本人の主体的な変化を促す:
- 本人が自発的に変化を促すため、治療効果が長期的に持続しやすいと考えられます。
- 家族関係の改善:
- 家族間のコミュニケーションが改善され、家族全体の幸福度が向上する可能性があります。
【まとめ】
CRAFTは、性依存の治療において、家族の協力を取り入れ、本人の主体的な変化を促すという点で、非常に有効なアプローチです。しかし、個人の状況や性依存の複雑さなどを考慮し、専門家の指導の下、適切な回復プログラムを設計して行くことが重要です。
あなた自身や身近な人が性依存に悩んでいたら、一人で抱え込まずに、専門家にご相談ください。
参考資料:
- Smith, J. L., & Meyers, R. J. (2012). CRAFT 依存症患者への治療動機づけ-家族と治療者のためのプログラムとマニュアル. 東京: 金剛出版.
- 吉田精次. (2021). 依存症の人を治療に向かわせるCRAFTの本. 家族としての”あり方””接し方”.東京:大和出版。
さらに詳しい情報については、カモシカ心理コンサルティングまでお気軽にお問合せください。
ご自身のプライバシーに配慮し、匿名で相談できる窓口も多数あります。インターネット検索などを活用して、自分に合った相談窓口を探してみてください。
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相談先例:
カモシカ心理コンサルティング (https://kamoshika-psych.com/)
精神保健福祉センター一覧(全国精神保健福祉センター長会 (https://www.ncasa-japan.jp)
依存症対策全国センター (https://www.ncasa-japan.jp/)
藍里病院 (http://www.aizato.or.jp/hospital/izon.html)
NPO法人ASK (https://www.ask.or.jp/)
NPO法人SOMEC (https://somec.org/)
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