「性的指向」と「性的嗜好」の違い
「性的指向」と「性的嗜好」の違い。
ご存知ですか?
読み仮名が同じであるためか、よく混同・混乱・誤植されます。
「性的指向」と「性的嗜好(性嗜好)」はセクシュアリティに関する全く異なる概念です。
会社で誤解を招いたり今の時代とグローバルな世界で恥ずかしい思いをしないように、しっかり違いを理解しておきましょう。
「性的指向」(sexual orientation)
「性的指向」は、「どんな人に」性的関心が向くか、というものかということです。
主に、どの性別やジェンダーの人を対象として恋愛や性愛的な感情を感じるかを指しています。
「指向」とある通り、全体的な方向性や傾向です。大雑把ですが、性的指向の中に異性愛、同性愛、両性愛、等と呼ばれる各カテゴリーがあります。
日常会話やメディアで、LGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイ、トランス、クイア)やレインボーのシンボルのことだけを取り上げて「性的指向」と言われることもありますが、大多数である異性愛も性的指向の一つです。
別の比喩で、生まれつき右利きの人が多く、左利きの人は少数派。現在では左利きの人だけを「利き手の人」などと呼ばないのと同じです。(以前は左利きの人は偏見の対象になることもありました。)
ただし、私たちは、自分の性的指向が若い頃からや常日頃から明確にわかっているわけではありません。
社会的慣例や慣習に無意識に従って思考・行動しているところが大きいでしょう。
対して、
「性的嗜好」(sexual preference)。
性的嗜好は、「どういった行為」に性的感情が繰り返し湧くかということです。
つまり、特定の性的ジャンルへの好みということになります。いわゆる性癖、好みの「プレイ」です。
(なお、俗的に他人から見て奇妙と思われるものを「性癖」と軽蔑的なトーンを含めて言いがちですが、誰しもが性癖を持っています。それを他人に知らせるかどうかの問題であるだけです。)
別の例えとして、「嗜好品」という言葉の通り、楽しみとしてタバコが好きな人、お酒が好きな人、珍味が好きな人、スロットマシンではなく競馬が好きな人、バンジージャンプに飽き足らずスカイダイビングをしたい人などなど、色んな方がいらっしゃいますね。
そして、集中して特定の嗜好にハマっている時期もあれば、何かをきっかけに別のジャンルに気が向き始める。それと同じです。
嗜好品は、これがなくても生きていける、ただちょっと人生の楽しみが減る、程度のはずのものです。(嗜好が心の中でこれ以上の地位を占めると危うくなってきます。)

(競馬に夢中・必死になって人生を破滅させることも。ほどほどに。)
性的行動の嗜好であれば、1対1、グループ、プロ、知り合いかそうでないか、道具、場所、ストーリー(シナリオ)等への好み(こだわり)として現れるでしょう。
つまり性的行動を起こすコンテクスト(context, 前後の文脈)が大事になるということですね。
よろしくない行為である盗撮や露出など、具体的で特化された性的行動は、性的嗜好と考えられます。
性的嗜好は心理学的学習(つまり体験・経験)によるものが大きいと思われます。ただし、生物学的要因も大きく影響し、また男女間の違い、発達(年齢)段階での違いも大きいでしょう、
性的嗜好を拗らせたりエスカレートさせると、自分も他人も困る結果になり得ます。
例えば、うつ、不安、散財や借金、解雇、離婚や友達失う、孤立、逮捕、服役、などなどです。
拗らせた状態である嗜好行動を無理やり止めると、別の嗜好行動が出てくることもあり得ます。
例えば、飲酒を無理して止めたら今度はパチンコに走った、盗撮を無理やり止めさせたら今度は電車での痴漢を始めた、などです。
(この辺りは非常に微調整や細かい舵取りが必要なところです。自力で難しそうなら早めにプロに相談しましょう。)
最後に、「LGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイ、トランス、クイア)」は性的嗜好の問題ではありません。誤解や漢字の誤変換には十分注意しましょう。
性的感情を感じる対象の者の年齢範囲は、ある程度固定された特徴であり個人間で大きく異なります。またその人の年齢の段階ででも変わります。
これを性的嗜好とすべきか性的指向とすべきかは研究や議論の最中にあります。
まとめとして、
「性的指向」は誰に対して、
「性的嗜好」はどんな行動・行為に対して、
性的感情が湧くかということになります。
https://note.com/kamoshikapsych/n/n210e60212493
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